第9章 姫巫女と飛行訓練
「ごらんよ!」
そこへ、マルフォイが飛び出し、草むらの中から何かを拾い上げる。
「ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」
彼が高々と持ち上げたのは、今朝、ネビルの祖母が孫に送った『思い出し玉』だ。
「マルフォイくん、止めて下さい!」
マルフォイを咎めるシャーロットを止め、ハリーが前に進み出る。
「マルフォイ、それを返せ」
怒りを孕んだハリーの静かな声に、マリアとパンジーは言い合いを止め、全員が二人に視線を集めた。
ハリーの様子に、マルフォイがニヤリと嫌な笑みを浮かべる。
「それじゃあ、ロングボトムが後で取りに来られる所に置いておくよ。そうだな――木の上なんてどうだい?」
「こっちに渡せったら!」
強い口調で続けたハリーがマルフォイに掴み掛かったが、彼はそれを躱して箒に乗り、空へ飛び上がった。
どうやら、上手く飛べると自慢していたのは嘘ではなかったようだ。
マルフォイは手近な木の高い枝まで舞い上がり、ハリーに呼びかける。
「ここまで取りに来いよ、ポッター」
ハリーはグッと歯を噛み締め、マルフォイの挑発に乗る。
箒を掴んだハリーの腕を止めたのはシェリルだった。
「ハリー、危ないよ。箒に乗ったこともないのに」
「大丈夫だよ、シェリル。僕が行かなきゃ」
心配するシェリルの手をやんわりと解き、ハリーは覚悟を決めて箒に跨る。
「ダメよ! フーチ先生が仰ったでしょう? 動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ!」
ハーマイオニーが叫んだが、ハリーはそれを無視して地面を蹴った。