第9章 姫巫女と飛行訓練
真っ青になって駆けつけるフーチと一緒に、シオンやハリー、マリアたちも駆け寄った。
フーチがネビルの身体を確かめ、息を呑む。
「手首が折れているわ」
「そんな……」
そう言ったのは誰だっただろうか。
ネビル自身、意識はあるが、身体のあちこちが痛むようで、動くたびに悲鳴を上げる。
もっと早く助けられたのに。
自分の無能さに嫌気がさしていると、フーチがネビルに肩を貸して立たせ、生徒たちへ口を開いた。
「私はロングボトムを医務室に連れて行きますから、その間、誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますよ」
涙で顔をぐちゃぐちゃにしたネビルは、手首を押さえながら、フーチに抱きかかえられるようにして歩いて行った。
その二人の後ろ姿を見送りながら、シオンは雲河に礼を言って下がらせる。
すると、ネビルとフーチの姿が見えなくなったとたん、マルフォイが大声で笑い出した。
「おい、あいつの顔を見たか? あの大間抜け」
マルフォイの笑い声をきっかけにして、スリザリンの寮生たちが一気にはやしたてる。
「ちょっと! 止めなさいよ、マルフォイ! 人のケガを嗤うなんて、サイテーだわ!」
「何よ、ロングボトムの肩を持つの? マリアったら……まさか、あんなチビでデブな泣き虫がタイプなわけ? ずいぶんと趣味が悪いのね」
マリアの言葉に意地悪く返したのは、スリザリンの女子生徒の一人であるパンジー・パーキンソンだ。
当然、そんな冷やかしに臆するようなマリアではない。
「だったら何かしら? 一度鏡を見てみたら? 人の悪口を言うあなたの顔ほど見苦しいものはないわよ。そもそも、ネビルの容姿をとやかく言えるほど、自分が可愛いとでも思っているの? 言っておくけど、あなたよりも努力家のネビルの方がずっと素敵だわ」
「何ですって!」
パンジーが顔を真っ赤にして怒る。
だが、容姿面に関して言えば、明らかにマリアの方が数段優っており、パンジーには万に一つの勝ち目もなかった。