第9章 姫巫女と飛行訓練
時間の流れは早く、問題の飛行訓練の授業はあっという間に訪れた。
時刻は午後の三時半。
正面玄関から校庭を通り過ぎ、傾斜のある芝生を下りたところには、すでに生徒の人数分だけ箒が並んでいる。
空は澄み渡り、少しだけ風が強いようだ。
校庭の反対側には、生徒の立ち入りが禁止されている『禁じられた森』が見え、暗い森の木々を風が揺らしている。
生徒たちの関心は当然空を飛ぶことであり、担当教師を待っている間、その話があちらこちらから聞こえていた。
そんな中、シャーロットはマルフォイと話をしている。
午前の授業中も、ずっと頬を叩いたことを悔やんでいる様子だった。
もちろん、謝罪を受け入れる気などないマルフォイは、シャーロットに対して喧嘩腰の態度だが、彼女は根気強く諭しているようだ。
そこへ、飛行訓練を担当するロランダ・フーチがやって来た。
白髪を短く切り、鷹のような琥珀色の瞳を持った女性である。
彼女は開口一番に怒鳴りつけるように言った。
「何をボヤボヤしているですか。みんな、箒の傍に立って。さぁ、早く」
手を叩いて急かすフーチに、シオンはすぐに苦手意識を持つ。
もともとシオンは積極的な性格ではないし、行動や動きも決して早くはない。
だからこそ、威圧的な人やせっかちな人は苦手なのだ。
マリアはどちらかと言えば行動的ではあるが、相手のペースに合わせてくれるし、ヒマワリも積極的な性格だが、一歩引いた距離を保ってくれる。