第9章 姫巫女と飛行訓練
やがて木曜日になると、朝食の席ではハーマイオニーが、図書室で借りたらしい『クィディッチ今昔』で覚えた、飛行のコツというものを話していた。
その話を懸命に聞いているのは、今まで危険だからと箒に近づけてもらえなかったというネビル・ロングボトムである。
マリアといえば、ハーマイオニーの話を聞くことなく、ぼんやりとしていた。
どうやら、上手い言い訳は見つからなかったようだ。
適当に仮病でも使えばいいのに。
そうしないのはひとえに彼女の真面目さ故であり、悪く言えば馬鹿正直なのだ。
そこへ、意気揚々と声高らかに話していたハーマイオニーだったが、一羽のめんふくろうがふくろう便を届けに来たことで遮られた。
どうやら、ネビルの祖母が小包を持ってきたようだ。
小包を開ければ、白い煙が詰まった大きなビー玉のようなものが入っている。
「『思い出し玉』だ! ばあちゃんは僕が忘れっぽいことを知ってるから……。何か忘れてると、この玉が教えてくれるんだ」
ネビルがギュッと玉を握ると、『思い出し玉』の中の白い煙が赤く染まった。
赤くなるのは、何かを忘れている証だ。
「あれれ……? 何か忘れてるんだ……なんだろう?」
懸命に思い出そうとするネビルの横合いから、誰かが『思い出し玉』をひったくる。
振り返れば、そこにいたのはマルフォイだ。
マルフォイの後ろには、クラッブとゴイルが控えている。
それを見て、ハリーとロンが立ち上がったが、それより早くシャーロットが前に出た。