【防衛部】BITTER&SWEET CHOCOLAT
第5章 籠という名のこの腕に星を閉じ込めて
一般客を交えた校内は賑わっていた。
思いのほか広告を受け取ってくれる人は多く、手持ちは少なくなっている。
すると、前方から見慣れた人物が歩いてきた。
「あ…そういえば鬼怒川先輩たち来てくれるって言ってたな」
先頭きって歩く箱根に続き、鬼怒川、湯布院。
女の子に声をかける蔵王に呆れる鳴子。
「先輩たち、私に気付くかな…」
雪菜は楽しそうに笑うと、平然と先輩に近づいていく。
そして、広告を手渡し笑顔を見せる。
「ありがとう」
鬼怒川が笑顔で受け取ると、そのまま通り過ぎてしまった。
「なんだーそれ」
「んー…演劇の広告みたい」
「あぁ、雪菜のクラスだっけか?」
「そうそう」
広告を覗き込む鬼怒川と湯布院。
「雪菜の奴、変な格好してたら笑ってやろうぜ」
「そういえば、どんな役やるんだろうね」
「地蔵とか?」
「なんでだよ」
雪菜は足を止め振り返ると、会話を続けて歩いて行く一行の姿。
「…気付かない…のかな。目、合ったのに…」
少し残念に思いながらも、うれしそうに笑う雪菜。
「そっか…本当に別人みたいなんだ…」
一人で笑うと、足取りも軽く広告配りを再開した。