第12章 太宰弟
森「何を言うのかと思えば…。理由を聞いても?」
矢張り最初は疑うか…。
幻「劉娥は正真正銘、其方の太宰治の弟です。私はこの2年間彼を育ててきました。然し、元々彼を買うよう指示したのは私の姉の薔薇だったのです。この紛争だって…」
森「君が主犯ではないのだろう?」
幻「ええ…主犯は私の姉の薔薇です。」
そして私は森殿に姉の狙いを話した。
信じてくれはしないだろうが、知っていて欲しかった。
森「それは劉娥君に話してあるのかい?」
幻「いえ…。」
森「それでは劉娥君は君が自分を捨てたと思うだろうね。」
それを聞いて目が覚めた。
私は直ぐに劉娥を呼んだ。
幻「劉娥!おいで。」
私が呼ぶと直ぐに攻撃をやめ、私の元へ来る劉娥ともうすぐ会えなくなると思うと寂しく感じる。
主「はい。」
森「太宰くん、君も来なさい。」
太「はい。」
劉娥の兄は劉娥からの攻撃を避け続けるのが大変だったようで疲弊していた。
幻「劉娥、君に話があるんだ。」
主「話…?」
幻「そう、君の隣にいるその少年…太宰治君は君の実の兄だ。先程私が言ったことは全て嘘…すまないね。」
主「ぇ…この人が、僕の……兄さん?」
太「何があったかは今は聞かない方がいいですか?」
森「太宰くんには後で教えるよ。」
此処で私は2人に薔薇の狙いを話した。
二人共表情を変えずにずっと聞いていた…やはり兄弟だな。
主「この抗争は…薔薇様の策略だったのですね…。」
最近は滅多に見せていなかった劉娥の表情が変わったのを私は見逃さなかった。
然し、その顔は心から残念そうなものだった。
嗚呼、なんてこの子は純粋な心を持っているんだ…。
彼が私の姉を苦手としているのは知っていたが、それでも彼女を信じて今まで訓練してきたという事は薔薇に多少なりとも尊敬の意を持っていたということになる。
幻「今まで黙っていてすまなかった。」
普通ならこんな私を許すものはないだろう。
主「光影様は…何も悪くありません。薔薇様に説得し…この抗争を止めないと…」
ここで私は背筋が凍るような気配を感じた。
劉娥の数メートル後ろに……薔薇が立っていた。
__________異能力発動時に使う扇子を持って。