第12章 太宰弟
太宰side
拙い事になった…今の劉娥に会えたのは嬉しいにしても、敵対する組織にいた事は知っていた。
真逆私に関する記憶が此処まで薄れているとは思いもしなかったが…然し、私の周りにいた黒服達は一瞬で片付けられてしまった。
紛れも無い事実……私の弟が今まで裏社会で生きてきたということ。
太「劉娥…?」
それでも弟に会いたかった。
どんなに弟が裏社会で他人を殺していようと、私は彼を受け入れる。
昔助けられなかった詫びとして…。
主「…ぃで」
然し…劉娥から発された言葉は私の予想とは異なるものだった。
主「僕に…近づかないで……!」
劉娥は私を拒絶した。
先刻から何度も私の言葉を遮ってきた幻条という男の言葉が劉娥を混乱させていた。
そして劉娥はとうとうその言葉に負け、私を鋭く睨みつけた…虚ろな瞳で。
太「おやおや…これは拙い事になってしまったね。」
こうなっては私も戦わなくてはならなくなる。
主「幻条様が下した命令は…絶対です。だから…あなたを、殺します。」
まるで操り人形かのように動き出した劉娥は、流石マフィアの一員だと言わざるを得ない程に素早かった。
太「私は君を殺せないのだよ。だから、大人しく私たちの元へ来て欲しいものだ。」
私は話す程の余裕はあるものの避けたり防いだりすることで精一杯だった。
幻条side
心苦しいが、私は劉娥を利用して森殿と話す時間を手に入れた。
森殿には私から頼みがあった。
この紛争を起こしたのは私ではない…。
森「貴君は私を殺そうとはしないので?」
幻「ええ、貴方に頼みがあるものですから。」
森「ほう…して、その頼みとは?」
先程の私の言葉で劉娥は目の前にいる青年…太宰治を倒すことに集中している。
此方を見ることは無いだろう。
幻「図々しいのは百も承知ですが、劉娥を…救ってはいただけないでしょうか?」
劉娥は本当に良い子だ。
彼は私には懐いてくれたものの、薔薇姉さんには怯えてばかり…そのせいもあって姉さんは劉娥を嫌っている…。
まあそれは姉さんの所為なのだが。
屹度私が死んだら姉さんは真っ先に劉娥を殺すだろう……。