第12章 太宰弟
僕は銃弾に当たらないように敵との距離を詰める。
主「幻条様さえ無事であれば…」
幻「我々の邪魔をするものは皆殺しにしなさい、劉娥。」
幻条の発言の邪魔をするものに例外はない。
僕は青年の近くを通って違う場所にいた敵を倒す。
青年が只者ではないことは会った時から分かっていた。
だから最後に一騎討ちをしたかった。
森「何をしているんだい、太宰くん。君が動かなければ弟くんに倒されてしまうよ?」
太「はい…。」
幻「劉娥、そこにいる包帯を巻いた男は君に任せる。私は森殿を倒すとするよ。」
主「…はい。」
敵の長は屹度幻条が倒してくれる。
だから僕は青年を倒すことに専念する。
主「貴方に恨みはない…でも、これが…仕事だから。」
久しぶりにこんなに長く話した。
普段話さなくなった所為で「はい」以外の言葉を口にすることに違和感を覚える。
太「折角の再開がこのような状況とは、私も驚いたよ、劉娥。出来れば君を私達ポートマフィアに入れたいのだけれど。」
この口振り…彼の口調は昔よく聞いていた兄のものと似ているような気がする。
幻「何をしている、劉娥。彼は君の兄などではない。先刻言ったはずだよ…君の兄は此処には居ない。」
そうだ、僕の兄は此処には居ないんだ。
思い出してみれば分かる。
然し、僕には少し気になることがあった。
彼の包帯の無い姿を見たことは無いか?
彼の声は兄の声と似ていないか?
彼は…本当に兄ではないのか?
考えれば考える程分からなくなる。
太「劉娥…?」
そう言って僕にゆっくりと近づいてくる青年は本当に僕のことを心配しているようだった。
主「…ぃで。」
太「え?」
主「僕に…近づかないで……!」
急にいつもとは違う大きな声を出したから…多分喉が弱り、声が掠れただろう。
太「如何して?」
主「…。」
僕は答えなかった…否、答えられなかった。
自分でも何故言ったのか分からないからだ。
…唯、頭が痛くなるだけで…。
幻「何時まで話しているつもりだい?君から仕掛けなければ君が殺されるというのに。」
幻条が僕に訴えかける…。
僕の頭は洗脳されたかのようにぼんやりする。
唯1つ…はっきりとしたことは、
目の前にいる青年が…敵であるということだった。