第12章 太宰弟
兄さんに会いたい…僕が生きていると知らせたい。
兄さんは頭がいいから屹度今までに話した何かで分かってくれるはず。
主「何がいいんだろう…?」
思い浮かんだのは黒い薔薇だった。
天然の黒薔薇は手に入りにくいという事は知っていたから、白薔薇を黒く染めようと考えた。
染められた黒薔薇なら兄さんにも分かるだろう…。
そして…初仕事の日が来た。
幻「準備はいいかい?」
主「はい。」
もう、やるしかないんだ。
僕は2、3人の構成員を連れてターゲットの元へ向かった。
男「本日はようこそお越しくださりました…おや、随分と若い方が取引の相手なんですね。」
どうやら何かの取引と言われているらしい。
取引というものが終わり次第殺す…。
主「ええ、何かご不満でも?」
男「いえ、全く。」
主「それでは始めていただけますか?」
早めに終わらせたい。
本当は嫌なのに…やるしかない。
男「この度の取引に関しまして__________」
男が話し始めた。
要約すると、マフィア傘下である自分達の組織の資金が足りない為援助して欲しいとの事。
主「分かりました、話を通しておきましょう。」
僕でも学はあった。
言葉や話し方は分かっている。
男「本当ですか!?良かった、話の分かって頂ける少年が取引相手で。」
嘘臭い笑みを浮かべながら話す男…その笑みが気持ち悪く感じた。
主「話を通しておくだけです。実際に資金が援助されるかは保証できません。」
男「それでも話だけでも通して欲しいんです。」
随分と演技が下手な人なんだな…自分が組織を裏切ろうとしている癖に…。
主「取引内容は以上ですか?」
男「え、ええ。以上です。」
主「それでは、失礼します。」
この男といるとどうも居心地が悪い。
男「いや、出口まで案内しますよ。」
主「ありがとう御座います。」
男の背中を狙える絶好のチャンス。
主「そう言えば、この建物には貴方の部下は居ないのですか?」
男「今は出払っております。皆夫々仕事に。」
主「そうでしたか、変な質問をして申し訳御座いません。」
男「いえ…さあ、もう直ぐ出口です。」
そこは来た道とは異なる道…此処が適所だろう。
ザクッ
僕は男の背に飛びつき持っていたナイフで背中を刺した。
男「ぐぁっ…き、貴様!」