第12章 太宰弟
夢主side
目が覚めると、僕は手と脚、更には口、首に枷がつけられ、檻の中に居た。
どうやら布が被せられているらしい。
こんな場所は知らない、一体何故こんな場所に来てしまったのか?
司「続いての商品は、彼の夢憂舞の長、式部征太郎様からの提供で御座います!商品ナンバー036は此方です!」
布が剥がされた。
一気に目に入ってくる光に一瞬目を細め、よく周りを見渡すと…そこには多くの人で溢れていた。
主「…!?」
司「優れた容姿に澄んだ瞳…鑑賞用、奴隷用、解剖してバラすも良し。様々な用途が御座います。スタートは2億円から!」
僕はここでやっと知った…ここは人身売買の会場だ。
僕は売られてしまう…2億円以上で。
何処を探しても兄さんはいない。
?「260億円!」
徐々に上がっていた金額が急に跳ね上がった。
多少のざわつきはあるものの、その後に数字を言うものは誰もおらず、結局…僕は怪しげな男に260億円で買われた。
司「毎度、ありがとうございました。」
作り笑顔で見送られた僕達は高級車に案内された。
?「乗りなさい、今日から君は僕のものだ。」
決して怒鳴りはしないものの、冷たい雰囲気を出しているのは伝わる。
主「はい…。」
?「私の家は此処から車で約1時間半だ。それ迄寛ぐといい。」
今すぐにでも逃げ出してしまいたい。
僕の頭の中にはそれしか無かった。
?「そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前は幻条光影。そして、家に帰れば私の姉、薔薇がいる。薔薇は少しキツい性格の持ち主だが、屹度上手くやって行けるだろう。もし困ったことが有れば私に言ってくれ。」
主「…はい。」
先程感じた冷たさはなんだったのだろう。
それに…僕はどう呼べばいいんだ…?
その後僕達は終始無言だった。
その沈黙を破ったのは使用人だった。
使「旦那様、間もなく到着致します。」
幻「嗚呼、分かった。所で君、名前を教えてくれないか?」
冷たいのは使用人にだけ…?
僕には優しく話しかけている…否、之は僕を油断させるための罠かもしれない。
取り敢えず警戒は怠らないようにしておかなければ…。
主「僕の、名前は…太宰、劉娥…です。」
幻「成程、劉娥君と呼ばせてもらうよ。之から宜しくね。」
主「此方こそ、宜しくお願い致します。」