第12章 太宰弟
数日後━━━━━━━
その兄弟はいつも通り通りを歩いていた。
昼は彼らの活動時間では無い為、唯の兄弟である。
然し…その容姿で周りとは僅かに異なる雰囲気を醸し出していた。
主「兄さん…今日は何処へ?」
太「うむ…如何しようものか…。」
何時も2人は一緒にいる。
兄は異能力者を操れるが、弟は未だ異能力が目覚めていない…若しくは異能力者では無い。
それ故兄が弟を護らなくてはならない。
?1「彼奴らが例の異能力者潰しか?」
?2「其の様です。」
?1「そうか…それならば我々の元へ来てもらおう。」
?2「直ぐに…ですか?」
?1「否、彼奴等の活動時間である夜まで待つのだ。」
?2「若し…違ったら如何なさるお心算で?」
?1「彼の容姿だ、売れば相当な金になる…。」
?2「そうですね、特に弟は。」
?1「嗚呼、集ら必ず連れて来い、良いな?若し厳しければ私が直々に手を下そう。」
?2「はい。」
太「今日は早めに終わらせよう。」
主「如何して?」
太「今日は特別な日だからね。」
主「特別な…日?」
そう…その日は弟…劉娥の誕生日なのだ。
太「私の大好きな日さ…大好きな人の誕生日だからね。」
主「兄さんの大好きな人…誰だろう…?」
太「若しかして…未だ気づいていないのかい?」
主「え?」
太「今日は君の誕生日だろう?」
主「え…あ、そうか。今日は僕の誕生日…。ってことは、兄さんの大好きな人って…」
太「君だよ、劉娥。」
主「僕も兄さん大好きだよ。僕にとって、兄さんは自慢の兄さん、誰よりもかっこいいもん。」
当時齢8の子供に恋愛は未だ早かった。
実際、劉娥には兄に対する尊敬や親愛こそあったものの、恋愛感情は持っていなかった。
勿論、その事を承知で太宰はこのことを話したのだ。
太「ありがとう、劉娥。さあ、支度をして今日の夜に備えよう。」
主「うん!」
弟は無邪気にもスキップをしそうな程に機嫌がよかった。
傍から見ればとても微笑ましい光景であるが、兄の頭の中では様々な問題が渦巻いていた。
太「今日の夜…何も起こらなければ佳いのだけれど。」