第11章 新しい任務
太宰side
女性は皆酷い状態で見つかったが、命に別条はない。
然し、精神的な傷は深い筈だ。
加えて髪を切られ売られている…高値で。
太「人間の…特に女性の髪は高値で売れる。それを利用した金儲け…穏やかではないね。」
劉娥の表情を見ると…元には戻っているもののそこには未だ怒りと僅かな悔しさが見られた。
主「守れなかった…。」
俯いた劉娥を抱き締める。
太「守れなくても、助けただろう?だから劉娥は悪くない。」
女装をしている劉娥を抱き締めている所を傍から見れば恋人同士に見えるかもしれない…まあ、実際そうなのだが。
主「兄さん…もう、帰ろう?」
震えた声と感じる温もりから劉娥が泣いていることが分かる。
太「嗚呼、今日はよくやったよ。そろそろ軍警と救急車が来る、此の場はもう彼等に任せよう。」
静かに頷き、泣き続ける劉娥を見て可愛いと思う私は屹度不謹慎にも笑っているのだろう。
劉娥side
自分の無力さに涙が溢れてくる…おかしい。
昔はこんなに弱くなかったのに…優しく、なったから…?
主「強く…なりたい。」
そう言いながら兄さんと社に向かい歩く。
兄さんは驚いたように此方を見る…。
太「今日の1件は私達でも防ぎきれなかった事だ。劉娥の所為では無いし、劉娥は先ず弱くない。自信も持つんだ。」
兄さんの励ましの言葉が心に響く。
太「だから劉娥、もう自分を責めるんじゃない。ほら、徐々探偵社に着くよ。乱歩さんに笑われたくないだろう?」
兄さんが涙を拭ってくれる。
こんなに甘えてしまっても良いものか…。
そう思いつつも兄さんにくっつきながら探偵社のドアを開ける。
主「戻りました…。」
敦「おかえりなさい!あれ…どうしました、劉娥さん?何時も以上に太宰さんにべったりですけど…。」
主「僕も…太宰さんだけど…。」
太「今回の1件で劉娥は疲れてしまったのだよ。」
強ち間違いではない…今回は演技とはいえ声を張り上げた為、何時もよりも体力の消耗が激しい。
国「戻ってきたのなら社長に顔を出してから早く報告書を書け、太宰兄弟!」
帰って早々煩いです、国木田さん…なんて言えたらな。