第8章 増えた愛
遥side
須賀野さんがもうすぐ迎えに来る。
準備をしないと。
重い身体を持ち上げ着替えを始める。
妊娠には慣れている。
子供を下ろすのにも慣れている。
でも、この気持ちは何なんだろう。
鏡の前に立ち、自分のお腹を擦る。
ここに僕と遼君との子供がいるんだ。
この子をまた、僕は殺すのか。
これで何人目だろうか。
僕も立派な人殺しに変わりはない。
「ごめんね・・・君を見捨てる感じになっちゃって。」
「遥、入っていいか?」
「っ!りょう・・・くん?どうしたの?」
「・・・少し、話さないか?」
「・・・そうだね。僕も話したいことあるんだ。」
遼君を部屋に入れてベッドに2人で腰掛ける。
「病院・・・行くんだろ?」
「うん・・・聞いたんだね。」
「聞いた。俺も行こうと思ってる。」
「そっか。実はね、遼君にも来て欲しいんだ。」
「やっぱり・・・何か大きい病気にでもなったのか?」
「違うよ。あのね。」
お腹に手を当て、遼君に全てを話す。
「僕、子供が出来ちゃったみたいなんだ。」
「出来たって・・・お、俺との子供か!?」
「うん。たぶん、そうだと思う。」
「じゃあ、病院って・・・婦人科か・・・」
「うん。」
やっぱ、子供なんて要らないよね。
今のこの状況を考えても産むなんて無理だ。
遼君に迷惑をかけるだけだ。
「それでね、今日は下ろそうと思って。」
「・・・は?下ろす?」
「うん。産んだとしても、この状況じゃ育てれない。無理だよ。」
「何・・・勝手な事言ってんだよ・・・」
「え?」
何で怒ってるの?
・・・あー、やっぱり子供が出来たこと怒って・・・
これで、僕はもう嫌われちゃったかな。
「・・・ご、ごめんね。勝手に子供なんか作っちゃって。迷惑・・・だよね。」
膝の上に置いた拳に力が入る。
その上に何粒かの涙が零れ落ちた。
「ごめんね・・・。」
分かってた事だ。
なのに、勝手に溢れ出てくる。
「勝手な事してんじゃねぇよ!妊娠?下ろす?何勝手に決めてんだよ!」
「ご、ごめんなさい。」
すごく怒ってる。
やっぱり子供なんて・・・作らなきゃ・・・
「・・・ちゃんと・・・話し合おう。これはお前だけの問題じゃないんだ。」
「え・・・?」