第8章 増えた愛
遥side
「篠田さーん。」
「はい。」
須賀野さんには産婦人科に送ってもらった。
ここは何度も来たことがある。
来る度に小さな命を捨てた。
「・・・森田先生。」
「やぁ、久しぶり。」
「急にすみません。」
「君はいつだって急だろ?・・・今日も下ろしに来たのかい?」
「そのつもりです。まずは検査してもらおうかなと。」
「いいよ。こっちに。」
森田先生は僕の話をよく聞いてくれる。
それこそ、妊娠した理由まで話してる。
その全てがレイプだった。
話を聴いてくれると同時に、僕の傷ついた精神までも癒してくれた。
「・・・珍しく話さないんだね。今までどこに?行方不明中のはずだろ。」
「それは・・・言えません。」
「そうか。そんな深追いするつもりは無いよ。ただ、今までの様子とは違うから何か理由があるんだろう。」
「すみません。」
遼君との事は誰にも話せない。
話したらどうなるか分からない。
「検査結果だけど。妊娠してるね。それもかなり経ってる。下ろすか下ろさないか決めるのは1週間が限度だよ。・・・しっかり相手と話し合って決めなさい。」
「っ!どうして・・・」
「・・・迷ってるだろ。恐らく、愛する人との子供じゃないのか?あの親友との子か、全く違う人との子か。それは分からないが、決めるのは君次第だ。いいね、1週間だよ。」
「何でもお見通しなんですね。」
「何でも・・・じゃないよ。ただ、君の気持ちは何故か分かってしまうんだ。これも何度も君を診てきたからだろうね。」
「・・・ありがとうございました。・・・また来ます。」
「・・・いい答え待ってるよ。」
診察室を出る時に、笑顔で手を降って見送ってくれた。
やっぱりいい先生だ。