第7章 ヤクザの恋人
遥side
「僕がアイツらの注意を逸らすからその隙に逃げて。」
「何言っ・・・」
「僕のせいだから。逃げて。拓真を巻き込みたくない。」
「・・・くそっ!」
拓真が僕の手を引き2階へ駆け上がった。
「拓真っ!?」
「俺はお前のことが好きなんだよっ!手は引く。けどな、好きなのは変わりねぇから幸せになって欲しいんだよ。ここで死なせてたまるか。」
拓真の部屋に着いて扉の鍵を閉める。
拓真は部屋に置いてあったバットを取り扉に向けて構える。
「お前を・・・ちゃんとその人の元へ返す。」
向こう側を向いていて表情は分からない。
けど、背中から拓真の気持ちが伝わってくる。
本気だ。
「・・・ありがとう。でも、自分の身は自分で守るよ。」
1階からバタバタと足音がする。
入ってきた。
「遥、窓から逃げろ。」
「拓真は?」
「後で行く。」
「やだ。先に行って。」
「遥。お前は帰るべき場所があるんだ。先に行け。」
僕の方を振り向き笑顔で促してきた。
「・・・分かった。じゃあ約束して。絶対死なないって。」
「・・・約束する。」
謎の間を置き、拓真は頷いた。
階段を上がってくる音。
早く行かなきゃ。
窓を開け、窓縁に足をかける。
下には遼くんが車から駆け下りてきた。
タイミングが良すぎる。
手を広げ、飛び降りるように促してくる。
「拓真!遼くんが来てくれたよ!!っ!?」
「あれがお前の好きになった人か。大切にしてくれそうで安心した。」
拓真が僕のすぐ後ろに立っていた。
後ろからは扉が壊される音がしていた。
「拓真っ!一緒に行こう!」
「・・・ごめん、遥。」
「えっ・・・」
そう言って僕の肩を押し、窓から落とした。
遼くんがギリギリの所でキャッチしてくれて、地面に体を打ち付ける事は無かった。
ただ、落ちている間、拓真が銃で撃たれたのが見えた。