第7章 ヤクザの恋人
遥side
「ふぅ・・・着いた・・・」
ここが、拓真の家。
久しぶりに見た。
インターホンに手を伸ばす。
ピンポーン・・・
「・・・遥っ!」
「拓真。急にごめんね。」
バタバタと走る音が聞こえる。
「遥!!」
「・・・拓真。今日で会いに来るのは最後ね。」
「何言ってんだ・・・戻ってこい。そしてまたやり直そう。」
「・・・無理なんだ。拓真。前にも言ったけど、僕の事は忘れて。」
「・・・その事なんだけどよ、ちゃんと言ってくれねぇか?理由。怒らねぇから。じゃねぇと納得出来ねぇよ。」
拓真は力強く僕を抱きしめ、耳元で囁く。
「・・・あのね・・・僕、ヤクザと付き合うことになったんだ。」
「・・・は?」
「・・・初めは好きじゃなかったんだ。無理やりだったんだ。でもね、その人の事好きになっちゃって・・・だから、その人の隣にいるって決めたんだ。」
「・・・俺じゃ駄目なのか?」
「違うよ。拓真。君のことはまだ大好きなんだよ。でも・・・何故かその人から目が離せないんだ。」
「・・・そうか・・・別の男を好きになったのか。」
僕は黙って頷く。
顔が見れない。
「ごめんね。僕、最低だよね。」
「そうだな。最低だ。」
やっぱり・・・これは許されることじゃない。
「・・・けど、何故だろうな。やっぱり嫌いになれない。」
その言葉に僕は驚き、思わず顔を上げてしまった。
「やっと見てくれた。」
その顔は寂しそうな笑顔をしていた。