第5章 恐怖心と恋心
遥side
また逃げちゃった。
泣いちゃってるし。
『ほんと遥は泣き虫だよな。』
拓真の言葉が聞こえた気がした。
『だって・・・僕のせいで怪我・・・』
『お前のせいじゃねぇって。アイツらが悪いんだよ。』
僕達が付き合い始めた頃、僕が数人に襲われている所を拓真が助けてくれた。
『僕がΩだから・・・襲われても仕方がないよ。』
『・・・俺、お前の家族だぞ?それに、恋人だろ?』
『うん。』
『守りたいと思うのは当然だ。いくらΩでも、お前にも自由に生きる権利があるんだよ。・・・笑って生きてて良いんだよ。』
『・・・でも・・・僕には笑う権利なんて・・・』
『あーもー!分かった!俺はお前の泣き顔よりも笑った顔が好きなんだよ!!だからお前を泣かした奴は許さねぇし、お前が泣くことも許さねぇからな!分かったかよ!////』
『えー・・・凄く偉そうだね・・・』
『な、なんだよ・・・好きな奴の笑顔を見てたいってのは当たり前だろ?////』
『ぷっ・・・はははっ!ありがとう、拓真。僕も強くならなきゃね。』
『・・・分かればいいんだよ。』
好きな人には笑ってて欲しい。
拓真に言われた言葉。
僕は坂間さんの笑顔が見たい。
そのためには僕が泣いてちゃ意味が無い。
余計に坂間さんを不快にさせるだけ。
別に好きになって貰わなくてもいい。
笑わせたい。
あの時みたいに。
「・・・これって・・・恋じゃん////」
そこに今までの恐怖心なんてなかった。
拓真の気持ちが分かる。
こういうことなんだ。
笑わなきゃ。
僕もいつまでも泣き虫じゃ駄目だ。
強くなるって決めたじゃないか。
振り向いて貰えなくても・・・
強くなって、あの人を自然に笑わせたい。
それだけでいい。
それが僕の幸せなんだ。