第5章 恐怖心と恋心
遥side
坂間さん、ずっとやってる。
笑うのが苦手なんだ・・・
っ!じゃあもしかして・・・
僕が怒ってるって勘違いしてたりもあったのかな?
そんなつもりじゃなかったのに・・・勝手に決めつけてたのかも。
鏡と一生懸命にらめっこしてる。
あんな姿見たこと無かったから新鮮って感じがする。
僕を安心させるためにあんなに一生懸命にして・・・
坂間さん・・・やっぱりいい人なんだ・・・
けど・・・これ事情知らない人が見たら変顔の練習してる人に見えるよ・・・
「表情筋痛てぇ・・・」
「そこまでなるんですか?」
「仕方ねぇだろ・・・」
頬を揉みながらブツブツと呟く。
坂間さん・・・頑張ってるな・・・
僕の為に・・・
そこまでしなくても、言ってくれれば・・・
・・・言えるわけないか。
そこまで親しい訳でもないのに。
考えているとお腹空いてきた。
何かあるかなと食堂に来てみた。
誰もいない・・・
お昼にはまだ早いし・・・
皆のご飯・・・作ろうかな・・・
お世話になってるし・・・
冷蔵庫を覗くと沢山の食材が。
これだけあれば何でも作れそう。
お米さえ仕込めば・・・
僕は大体の人数分の昼食を作り始めた。
料理はお母さんに教えて貰ったり、拓真と作ったり・・・
僕はΩだからなんの取り柄もないからせめて、料理だけでもと練習していた。
特別に美味しいわけじゃないと思う。
拓真は「不味くはない」と言っていた。
拓真のお母さんは料理が上手だったからとても敵わなかった。
1回くらいは拓真に「1番美味しい」って言われたかった。
それも叶わないけど。