第5章 恐怖心と恋心
遥side
その後も、中原さん、山田さんの仕事場を体験したけど・・・
ギャンブル、キャバクラと僕には無理のある場所ばかりだった。
はぁ・・・何も出来ないのかな・・・
「遥!」
「っ!坂間さん?」
自分の部屋までの廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「お前、この3日間どこに行ってたんだ?!」
「えっ・・・えっと・・・」
怒ってる?
「その・・・すみません・・・。」
「なんで謝るんだ。」
「その・・・仕事場の見学を・・・」
「は?外に出たのか?」
上から見下ろされる。
すごく怒ってる。
睨んでる。
「外には出るなと言ったはずだ。」
「そうですけど・・・」
怖い。
顔見れない。
「ごめんなさい・・・」
ただ、謝るしかできない。
「でも・・・坂間さん・・・好きなようにって・・・」
「そんな事言った覚えない。」
「えっ・・・」
言われた・・・
確かに言った・・・
「そんな・・・はず・・・何か出来ることないか聞いたとき、坂間さん、好きなようにしろって・・・言いました・・・」
「いつだよ。」
「いつって・・・3日前に・・・」
どうして・・・?
僕がおかしいの?
僕は何も言わずに部屋に駆け込んだ。
「っ!遥!」
坂間さんの声をかき消す様に扉を閉めて鍵もかける。
あの人の事、少しでも良いかもって感じたのは間違いだった。
やっぱり怖い。
何で僕、こんな所にいるんだろ。
何であの人の妻なんだろ。
この3日、外に出てたし、いつでも逃げれたのに・・・どうして逃げなかったんだろう。
坂間さん、すぐ怒るから・・・怖い・・・。
僕は扉を背に頭を抱え泣いてしまった。