第11章 幸せな家族
遥side
退院の日になった。
幸希を抱え遼くんを病室で待つ。
「お父さん遅いね。」
「あう。」
何かあったのかな?
仕事が長引いてるとか?
それでも優先して来てくれそうだけど・・・
病室の扉が開く。
「遼く・・・拓真?」
「・・・準備出来てるか?」
「うん。でもまだ遼くんが・・・」
「・・・これ。預かってた。」
拓真が渡してきたのは白い封筒。
手紙かな?
中身を開けると「遥へ」と書いてある。
遼くんの字だ。
「ねぇ・・・これ・・・なに?」
「中身を見たが早い。俺は外に出てるから。」
ゆっくりと綺麗に折りたたまれた紙を開く。
『勝手な事をしてしまってすまない。しばらくの間、お前と距離を置こうと思う。』
え?
『これがお前と子供にとってもいい事だと思う。まだ子供は小さいし、自分の身を守るだけでも今回の事みたいになってしまう。それだけは避けたい。子供にはこんな思いをさせたくない。それに、多分、俺は警察に捕まるだろう。何年になるかは分からない。ただ、必ず子供が大きくなったらまたお前の元へ帰ってくる。約束だ。』
なに・・・これ・・・
『さよならは言わない。また会える日を楽しみにしてる。だから、その時は笑顔でおかえりって言って欲しい。』
封筒の中から通帳が出てきた。
『この金はお前らが生活出来るように用意したものだ。父親として出来ることはこれくらいしかないからな。使ってくれ。』
通帳の中は億単位の数字が。
多すぎるよ。
こんなに使えない。
「うっ・・・遼くん・・・相談してくれればよかったのに・・・ばかぁ・・・ひっく・・・」
溢れ出る涙が手紙を濡らす。
そして、最後にボヤけて見える文字。
『──愛してる。』
その言葉は遼くんが最後に言ってくれた言葉だった。
同時に抱きしめられた時の温もりが蘇る。
「僕もだよ・・・。約束だからね。」
その時まで一人前のお母さんになってみせるから。
この子も立派に育てるから。
ちゃんと帰ってきてね。