第11章 幸せな家族
遼side
「拓真、ちょっといいか?」
「はい。」
赤ん坊を幸せそうに抱き抱える遥を病室に置いて、拓真と屋上へ出る。
ここなら誰もいない。
「ふぅ・・・お前に1つ頼みがある。」
「?」
「しばらくの間、遥を頼む。」
「はい?!」
「色々考えたんだ。赤ん坊はまだ小さいし、流石に守りきれねぇ。大きくなったら必ず戻ってくる。子供まで危険な目には合わせたく無いんだ。」
「そんな勝手な・・・遥には?」
まだ言ってないし、言うつもりもない。
だから、俺は遥に手紙を書いた。
今回の件はかなり大きくなってしまい、警察沙汰になっている。
いずれ、俺たちの事もバレる。
もちろん、牢屋に入ることになるだろうな。
「俺が姿を消したらこれを遥に渡してくれ。」
手紙を渡す。
自分で渡すのが1番だ。
だが、遥の顔を見れなくなってしまいそうで俺には出来ない。
それに、間違いなく遥は俺を止める。
「・・・坂間さん、遥の今の身体の事知ってますよね?」
「・・・あぁ。」
猪田の薬の作用で精神が不安定な状態だと聞いた。
それもゆっくり治療すれば回復するらしい。
「遥がこれを読んだらパニック症状を起こしますよ。」
「分かってる。けど、お前がいる。そこも含めて遥を頼みたい。凄く勝手なのもわかってる。だが、俺がいる事で家庭が壊れるのは遥にとって最も残酷な事だ。」
遥の状態が落ち着いたら離れるつもりだ。
それまでは俺が支える。
「だったら・・・せめて番にしてやってください。まだ、噛んでませんよね?」
「・・・そうだな・・・」
番か・・・
俺だって遥を番にしたい。