第10章 愛しているから
拓真side
「っ!」
「クソっ!このガキ!」
遥はひたすら殴られた。
両手を縛られ、身動きが出来ないようだ。
力も入っておらず、意識もあるのか分からない。
「やめてくれ・・・もう充分だろ・・・」
遥を殴る鈍い音がずっと聞こえていた。
俺も身動きが取れないように両手を掴まれていた。
「かはっ・・・はぁ・・・」
「まだ息出来てるじゃねぇか・・・」
「うっ!・・・」
血が流れ出ている。
意識が朦朧としている。
もう見てらない。
中原さん・・・
早く来てください・・・
ガラッ
っ!
「中原さん!」
息を切らして中に入ってきた。
「はぁはぁはぁ・・・猪田・・・さん・・・」
「・・・戻ったのか・・・」
「・・・遥は何も悪くないです・・・俺が・・・罰を・・・」
「悪いが・・・俺は今コイツにイライラしてる。お前に興味なんてねぇよ。」
「うぐっ・・・」
中原さんが慌てて遥の前に出る。
「俺が代わりに受けます。コイツはもう意識がありません。」
「・・・邪魔だ。」
「お願いします。」
「なか・・・はらさん・・・」
遥が力を振り絞って声を出す。
「まだ意識あるじゃねぇか。」
「・・・俺はここから退きません。」
「・・・口答えしてんじゃねぇよ!」
中原さんが殴られる。
「どいつもこいつもっ・・・ムカつくっ・・・」
中原さんが代わりに罰を受けている。
ビクともしない。
全てを受け止めている。
「正直、お前は殴りがいがねぇんだよ・・・」
猪田が銃を取り出し、中原さんに向ける。
殺す気か!?
それに対しても中原さんは反応を見せない。
覚悟をしているようだ。
パーン!
「うっ!」
肩を撃たれる。
その後も銃声は続く。
それでも中原さんは倒れなかった。
「いい加減に・・・しろよ・・・」
最後に響いた銃声は中原さんの腹を撃ち抜き中原さんの意識を奪った。