第10章 愛しているから
中原side
「はぁ・・・はぁ・・・」
姉ちゃんの手を引いて走り続ける。
「智哉・・・待って・・・」
「・・・ごめん・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・どこ行くの?」
姉ちゃんの手を離す。
無事、外に出ることは出来た。
ここからまたさらに移動しないといけない。
「坂間さんの所で匿ってもらう。」
「けど、そんなことして・・・大丈夫なの?遥くんは?」
「・・・大丈夫。俺はすぐにまた戻る。そして、全部終わらせてくる。」
「・・・分かった。お姉ちゃん待ってるから。ちゃんと帰ってきてね。」
「うん。」
ここから早く移動しないと。
途中でタクシーを捕まえ、乗り込む。
20分くらい飛ばして着いた所は俺が居た屋敷。
きっとここにいるはずだ。
「姉ちゃん。着いたよ。」
「うん・・・。」
仕事の人間と会うのは初めてだからか、緊張しているようだ。
正直、俺も緊張している。
この人達を裏切ったんだ。
どんな事を言われるだろうか。
殺されても当然だ。
「っ!中原!」
1番に気づいたのは川口だ。
怒ると言うよりは驚いていた。
「お前・・・今までどこにいたんだよ・・・その人は?」
「俺の姉。」
「お姉さん!?なんでまた・・・」
姉ちゃんがペコりと頭を下げる。
「川口、時間が無い。坂間さんは?」
「あぁ・・・部屋に・・・俺も行く。」
川口も着いてきてくれた。
姉ちゃんはまだ緊張しているようだ。
「・・・姉ちゃん・・・ごめん。」
そっと手を握る。
少しだけ落ち着いたのか、ほっとしたように力が抜けた。
「うん・・・智哉、ありがとう。」
坂間さんの部屋の前に着く。
ノックを2回して、中に入る。
「っ!中原・・・?」
「お久しぶりです・・・」
坂間さんは武器を装備している所だった。
「お前・・・何して・・・いや、後で聞く。何の用だ?」
意外にも穏やかだ。
「姉を匿って欲しいんです。」
「・・・分かった。」
「・・・理由聞かないんですか?」
「お前から頼みとか珍しいからな。何かあったんだろ。その代わり、全部話してもらうぞ。」
「はいっ・・・」
これで安心して動ける。
再び戻ろうと振り返る。
「待て。持っていけ。」
坂間さんから銃を預けられる。
「坂間さん・・・俺は先に戻ります。遥を・・・早く助けてやってください。」