第10章 愛しているから
遥side
「遥・・・」
「拓真?おはよ。」
「おはよう。ちゃんと眠れたか?」
「・・・うん。もう時間?」
拓真が出入口に向かう。
「あぁ。動けるか?」
ゆっくりと立ち上がってみる。
何ともない。
昨日よりは身体が軽い。
拓真が薬飲ませてくれたのかな?
僕も拓真の所へ向かう。
中原さん達に近づかない方角に行かないといけない。
いつもとは逆に出なきゃな。
「行くぞ。」
拓真の手を握り扉から出る。
見張りは2人。
通報が行く前に2人を気絶させる。
初めは躊躇してたけど、慣れてきた自分が怖い。
隠れながら時間を稼ぐ。
5分程経った。
「拓真、そろそろ見つかっておかないと中原さん達が動きにくいかも。」
「そうだな。」
わざと敵の前に現れ逃げる。
狙い通りにサイレンが鳴り響く。
「遥、キツイか?」
「だい・・・じょうぶ・・・」
やっぱりお腹が重いと動きにくい。
「少し休もう。」
「うん・・・」
空き部屋を探す。
どのくらい経っただろうか。
中原さん達はそろそろ逃げ出した頃かな?
「中原さん達、無事かな?」
「きっと大丈夫だよ。」
息を整えながら身体を休める。
ポケットからコロコロと薬瓶が転がってきた。
ピルだ。
この子・・・もう動かなくなった。
死んでるのかもしれない。
今これ飲んだところで何も変わらない。
けど・・・
1粒だけ出して口元に運ぶ。
仮にこの子が生きてたとしてもあの人の子じゃないかもしれないんだ。
だったら・・・
「遥・・・?何してるんだ?」
「・・・もう分からないんだ。自分の気持ちが・・・」
「おい、それ・・・って・・・何考えてんだ!」
拓真が腕を掴み止めに入る。
それを僕は振り払う。
「止めないで!もう・・・決めたんだ。」
「遥・・・馬鹿な事言ってんじゃねぇよ・・・守るんじゃなかったのかよ・・・」
「もう守りきれない気がする・・・それにこの子の父親あの人なのか分からない。だから。」
口に入れようとした瞬間。
「っ・・・」
え・・・今・・・
「遥?どうしたんだ?」
「今・・・今っ!」
後ろの扉が開く。
「見つけた・・・」