第10章 愛しているから
遥side
身体が動かない。
気持ち悪い。
「あ・・・赤ちゃん・・・」
お腹を触ってみるとまだ膨らみはあった。
けど、やっぱり動かない。
そもそもこの子は本当にあの人の子?
これまでに何人の男の人と身体を交えた?
あの人の子だと確信が持てなくなった。
ここに来てからも何人から犯された?
周りを見渡すと薬が入った戸棚を見つけた。
ここは医療室みたいだ。
今は僕以外誰もいない。
動かない身体を無理やり動かした。
戸棚には分からない薬が沢山並んでいる。
ただ1つ、分かる薬があった。
「ピル・・・」
ボクはその薬瓶をコソッとくすねた。
念の為。
あの人の子じゃないならいらない。
あんな人達の子供なんかいらない。
扉がゆっくりと開く。
「起きてたのか。戻るぞ。」
猪田さんが僕を拓真のいる隣の部屋に戻した。
「遥。大丈夫か?何もされてないか?」
「覚えてない。眠っていたみたい。」
「そうか。お腹もまだ脹れているな。」
「・・・生きてるかわかんないけどね。」
「そんな事言うな。きっと大丈夫だ。」
「・・・誰の子かも確信持てないのに。」
「間違いなくあの人の子だろ。信じろ。」
「・・・ごめん。少し休むね。明日は中原さんにここを出てもらわないと。」
拓真の膝を枕にして横になる。
床は冷たいのに対して、拓真の温もりが伝わってくる。
遼くん。
もう一度会いたい。
抱きつきたい。
自分の本当の気持ちが分からなくなってきていた。
薬のせいなのかな?