第10章 愛しているから
拓真side
遥が寝てから10分程して、中原さんが入ってきた。
「遥は寝てるのか。これ、今日の分だ。」
「いつもありがとうございます。」
今のうちに話しておくか。
「中原さん。少しお話があります。」
「なんだ?」
「明日、俺達はいつもの様に脱出します。その時にお姉さんと逃げてください。囮になります。」
この言葉を聞いて中原さんは驚いていた。
「そんな事出来るわけないだろ・・・」
「これは遥ともちゃんと話し合ったんです。その方が貴方も自由に動けるし、俺達も早くここを出れるかもしれない。だから、その・・・ここを出たら坂間さんに俺達のことを教えて欲しいんです。遥を早く楽にさせてやりたいんです。」
初めは迷っていた様子の中原さんは少ししてから頷いてくれた。
俺達が抜け出すとすぐにこの敷地内にはサイレンがなる。
それが中原さん達が動く合図。
抜け出している間、俺達はなるべく中原さん達の部屋に近づかない様にして時間を稼ぐ。
「長くても10分が限界かと。いつもより逃げる範囲が狭い分、時間稼ぐのも厳しくなります。・・・行けそうですか?」
中原さんは普段見せない様な微笑みを浮かべ、
「充分だ。ありがとう。」
そう言った。
「・・・だが、俺はすぐここに戻ってくる。じゃないと遥がまた酷い目に会うだろうからな。それまでは耐えてくれ。」
「はい。・・・では、明日。」
中原さんは薬を渡して出ていった。