第10章 愛しているから
拓真side
それから更に1ヶ月程が経った。
俺と遥は何度も脱出を試みた。
捕まる度に俺でなく、遥が罰を受けた。
薬の効き目が強くなってきているのか、これまでよりも幻覚や幻聴が聴こえているようだ。
中原さんが毎日持ってきてくれる薬があるからまだ良い方だ。
これが無ければもっと酷い状況になっていただろう。
「遥、もう脱出はやめよう。」
「・・・あと1回だけ。お願い。」
「何か他に目的があるのか?」
「中原さんのお姉さんをここから逃がしたくて。」
だから最近素直に外に出ようとしなかったのか。
「そしたら、中原さんの負担は少しはなくなるから自由に動けるんじゃないかなって。」
「なるほどな・・・けど、どうやって?」
「今は僕達にだけ目を光らせてるはず。これだけ脱出を繰り返していたからね。僕達が脱出する時に上手く出てもらう。中原さんがいるから裏口とかはわかるだろうし。」
「そうだな・・・」
遥はずっとこのことを考えていたのか。
その為に脱出を?
そしてその度に罰を?
だったらこの計画は無駄にはしない。
「・・・中原さんにはここに薬を持ってきてくれた時に話そう。」
「分かった。それまでは寝てろ。またこんな傷付けて・・・」
「うん。そうするよ。」
この1ヶ月で遥の身体についてわかった事がある。
薬を打たれた後、次起きた時には幻覚を見て必ず暴れる。
それを俺が抑え治療薬を飲ませる。
こうすることで遥は落ち着くのだ。