第10章 愛しているから
中原side
両親の御通夜を終え、1人で家までフラフラと帰っていた。
坂間さんからは色々聞かれたが、何も答えなかった。
姉は既に居なかったと伝えた。
怖くて本当のことを言えなかった。
御通夜には沢山の人が来てくれた。
改めて父さんは信頼されていたんだという事が分かった。
空から水滴が落ちてきて、頬を伝った。
雨か・・・
ついてないな・・・
そのうち雨は酷くなった。
雨宿りする場所もなくただひたすら家まで歩いた。
車が横を猛スピードで走り抜け、水しぶきを上げる。
ビシャビシャに濡れてしまった。
何もやる気が無くなり、壁にもたれ掛かる。
「くそっ・・・何なんだよ・・・」
自然と涙が溢れ出た。
我慢していたのが全て流れ出ていた。
そのままその場に座り込む。
姉を助けに行かなきゃならない。
・・・俺一人でやれるのか?
今更不安になってきた。
約束したんだ。
分かってる。
けど・・・この状態で?
無理かも・・・しれない。
ボーと夜空を眺めていた。
「あの・・・」
目の前の空が青い傘で隠れる。
「大丈夫・・・ですか?」
「?」
目の前に心配そうに見つめるある少年がいた。
制服を着ている。
高校生か?
「あの・・・これ良かったら使ってください。僕、友人に入れてもらうので。」
そう言って傘を渡してきた。
「泣いてるんですか?」
「・・・よく話すな。」
「あわわっ!迷惑でしたらごめんなさい!その・・・気になっちゃって!」
変わった奴だ。
見ず知らずの男をこんなに気にかける奴なんて初めて見た。
「・・・別に迷惑じゃねぇよ。」
話す気なんて全く無かった。
すぐ消えて欲しいと初めは思っていた。
「・・・何か・・・悲しい事でも・・・その服装・・・もしかして・・・」
「両親が死んで通夜だったんだ。」
「っ!ごめんなさい!人の気も知らずに!」
けど、不思議と俺は話していた。
寂しい気持ちが少し晴れる気がした。