第10章 愛しているから
中原side
「・・・色々あってな・・・もう何もかも捨ててしまおうかと考えていたんだ。」
俺こそなんで知らない奴に話してんだ。
「それは駄目ですよ!諦めるのは良くないです!何があったかは分かりませんが・・・」
「・・・幸せに暮らしてるお前に何がわかる。俺はお前とは違うんだよ。」
「っ・・・確かに幸せかもしれないです。でも・・・僕だって死のうって思った事何回もあります。」
「・・・いじめられてるのか?」
「そういう訳ではないですが・・・」
俺の前にしゃがみ同じ目線になる。
よく見ると綺麗な顔してるんだな。
「実は・・・僕Ωなんです。」
「・・・は?」
笑顔でそう言ってきた。
Ω・・・初めて出会った。
・・・笑顔で言うことじゃねぇだろ・・・
「初めは嫌なことばっかで・・・気分を悪くしてしまったらすみません。その・・・色んな事も経験したんです。何度も死にたいって思いました。」
色んな事・・・
こんな若いのに・・・
俺より辛い人生を送っているんだな。
俺だったら死んだ方がマシだ。
「けど、大事な人が出来て。それからは少しずつ頑張ろうって思えたんです。お互い支えながら生きていこうって。だから、今は幸せです。あなたには居ないんですか?大事な人。」
「俺の大事な人・・・」
「はい。守りたいって思う人です。」
姉の事が思い浮かんだ。
「・・・俺には無理だ。」
「無理なんかじゃないです!人間って案外気持ちで変わるもんですよ!・・・年下の僕が言うのはちょっと変ですが・・・けど、何故か貴方ならできる気がします!自信を持ってください!」
その言葉に背中を押された。
そうだ・・・弱気になってちゃ駄目だ。
「・・・ありがとう。少し自信が持てた気がするよ。」
「それなら良かったです!」
コイツの綺麗な笑顔に支えられる。
また会いたい、そう思った。
これが俺の初恋だった。
好きになっては行けない相手。
分かっていた。
けど、1度抱いた想いは止められないものだ。