第10章 愛しているから
中原side
やがて、父と母は息を引き取った。
「あぁ・・・父さん・・・母さん・・・」
姉は放心状態だ。
俺はそんな姉を抱きしめていた。
「いい!その絶望の顔!最っ高だよ!あっははは!」
こいつ狂ってる。
「智哉・・・なんで・・・こうなったのかな・・・」
「ごめん・・・ごめんね。姉ちゃん。」
俺のせいだ。
俺が「父さん」なんて叫んだから。
「ふぅ・・・少しスッキリした。・・・その女は見逃してやるよ。ただし、約束を守れ。何でも言う事を聞くんだな。」
「・・・分かってる。何をしたらいい?」
「そうだな・・・まずは・・・」
猪田が姉を担ぐ。
「いやっ!離して!」
「1週間後、俺の所まで来い。話はそれからだ。もし来なかったらこの女を殺す。」
「・・・分かった・・・1週間後だな。約束だからな。」
「智哉!何言ってるの!騙されちゃ駄目よ!」
「・・・姉ちゃん。大丈夫。ちゃんと迎えに行くから。それに、俺の弱みがなければこいつらも困るはずだ。約束は守るよ。」
「違う!そうじゃないわ!智哉、来ちゃダメだって言ってるの!全部嘘に決まってる!アンタも殺されるのよ?!」
「姉ちゃん、俺、父さん達に姉ちゃんのこと頼まれちゃったから。」
大丈夫、きっと。
こんな条件を出してきて裏切るはずがない。
それに、さっきの様子だとコイツは目の前で人を殺すのが趣味みたいだ。
絶望の顔が好きなのだろう。
「待ってて。必ず助けるから。」
「・・・来ちゃダメ・・・アンタだけでも・・・生きてよ・・・」
それは出来ないんだ。
ごめんね。