第10章 愛しているから
中原side
坂間さんが跡を継いだのは俺が入って5年程たった頃だった。
仕事にも慣れ、父と同じ仕事をさせて貰えるようになった。
坂間さんは俺と変わらない年齢なのにここの親分になった。
きっとαだったからだろう。
父も年下に負けるなんてと悔しんでいたが、尊敬していると言っていた。
あの人は誰からも憧れを抱かれる。
それからすぐのことだった。
俺達の組と猪田の組が敵対していた。
それが悪化したのだ。
毎日どこかで争いが起き、死人や怪我人が出た。
家族がいる俺達はこれまでよりも更に身を潜めて暮らすことになった。
もちろん、俺たちが親子だとバレない様にもした。
「智哉、父さんはこの戦いを終わらせてくる。」
「え、どうして父さんが?」
「仲間が何人も殺された。せめてもの償いだ。」
「だったら俺も行く。」
「お前は家族を守ってくれ。必ず帰ってくるから。」
「・・・分かったよ。絶対だからな。」
完全に死フラグじゃねぇか。
そう思った。
だから放っておけなかった。
俺はこっそり父の後を追った。
なんと言われようと俺は家族を守る。
もちろん父もだ。
着くと既に悲惨な状態だった。
何人もの仲間が血だらけで倒れていた。
「これで終わりにしよう。猪田。」
「それを決めるのは坂間次第だな。手を引けば俺達も関わらなくて済む。」
「・・・あの実験で何をしようとしてるかは知らないが、あまりにも勝手すぎる。」
2人が話しているのを物陰に隠れながら伺う。
話し合いで解決する気か?
カチャ
銃を構える音が聴こえた。
どこだ?!
周りを見渡す。
チカチカと光る銃口が父を向いていた。
あそこだ。
この距離からは俺の銃じゃ狙えない。
どうする、時間がない。
「・・・あんたには関係ないよ。どうせもう死んじゃうから。」
猪田が手を上げる。
おそらく合図だ。
「父さん!!」
俺は飛び出し父を押し飛ばした。
銃弾はおれの肩を掠めて地面に跳ね返った。
「・・・智哉!?」
「危なかっ・・・っ!!」
「父・・・さん・・・ねぇ。」
猪田が不敵な笑みを浮かべながら俺を見た。
しまった!
「へぇ、家族なんだ・・・君たち。」
バレてしまった。
俺の所以で。