第10章 愛しているから
中原side
普通に学校も行って、姉は就職して。
父親は何度か怪我を負って帰ってくる事はあったけど、俺達には一切仕事の問題を持って帰ることは無かった。
幸い、俺以外はβだった。
βの親からαが産まれるのは稀だが、Ωが居なかったから何も問題は無かった。
俺達は何不自由なく暮らしていた。
そして、自分が高校を卒業して将来を決める事になった。
学校や親からはαだから、何の心配もいらないと任せられた。
本来なら大学に行き、何か大きな企業に務める事だって出来たかもしれない。
けど、俺は父親の仕事をする姿に憧れを抱いていた。
周りには父親がヤクザ関係だって言えない。
だから、学校にもそんな事言えなかった。
「智哉、そろそろ卒業後の事考えないと。」
俺があまりにも将来の事を話さなかったからか、少し心配し始めていた。
「・・・うん。大学・・・行こうかな・・・。」
「先生も成績は申し分ないって言ってたからどこの大学でも行けると思うわ。母さん的には国立に行って欲しいのだけれど・・・」
ウチは別に貧乏って訳でも無かった。
きっと将来のことを考えて言ってくれているんだろう。
「はぁ・・・」
「智哉、どうしたの?」
「姉ちゃん。帰ってたんだ。」
「うん。今日は早番でねー。」
姉は看護士だった。
毎日疲れて帰って来ていた。
「・・・元気ないね。お姉ちゃんがマッサージしてやろっか?(笑)」
「いいよ。姉ちゃんの方が疲れてるでしょ。」
「ノリ悪いなー。で、どうしたの?」
姉には何故か正直に話せた。
「そっか・・・私はいいと思うよ。お父さんに憧れるの私も少し分かるし。・・・ただ、反対はされるだろうね。命張らないといけないし。」
「分かってる。けど、1度父さんが仕事してる所見ちゃったんだ。その時に感じるものがあって。その時の父さん凄く格好良かったんだ。」
「・・・応援するよ。あんたがやりたい事なんだから。」
姉は背中を押してくれた。
おかげで両親も説得し、父の紹介で同じ組に入る事になった。
その時の親分が、坂間さんの祖父だった。