第10章 愛しているから
遥side
「治療薬だ。」
薬を持って僕達の方に歩み寄ってくる。
「中原さん、よく中に入れましたね。」
「・・・俺には反抗出来ないと思ってるんだろうな。何も不審がられること無く入れた。」
「・・・治療薬って・・・でも、そんな物無いって・・・」
「・・・俺が1人で作った。」
僕の為に?
よく見たらクマも酷い。
僕はその薬を受け取ろうと手を伸ばす。
「待ってください。」
拓真が僕の手を掴み止めた。
「・・・信じろって言うんですか?」
「・・・無理なのは分かってる。けど、もう決めたんだ。俺はお前を助ける。何があっても。」
「・・・どうして急に。」
「・・・愛しているから。」
あ・・・
「嘘じゃないんだ。本当にお前を心から愛しているから。助けたい。力になりたい。」
「中原さん・・・」
僕は中原さんから薬を受け取る。
「遥!何やってるんだ!」
「分かりました。信じます。けど、これが最後です。それから、全て話してください。」
「分かった。」
僕は薬を一気に飲み込んだ。
苦い。
けど、特に身体には負担が無い。
「・・・遥?」
拓真が心配そうな表情で僕の頬を撫でる。
「心配ないよ。・・・中原さんありがとうございます。」
「遥・・・今まで本当にすまない。それから・・・拓真と言ったな。お前も。」
「・・・俺はまだ貴方が嫌いです。」
「無理もない。ただ、謝らせてくれ。本当にすまなかった。」
拓真はまだ許してないようだ。
睨みつけている。
「拓真・・・話を聞こう。それからちゃんと考え直そう。もしかしたらここから出られるかもしれない。」
中原さんは僕達の前に座り直す。
「俺の父親は・・・ヤクザ関係の仕事をしていた。母親は普通に働いていて、なるべく目立たない様に暮らしていたんだ。」