第10章 愛しているから
拓真side
まただ・・・
一体遥に何が起こってるんだ?
「おい、引き剥せ。」
遥が両腕を捕まれ引き離されようとするが、力が強すぎるのか、全く離れない。
「こういうのは・・・」
ガッ!
遥の腹を思いっきり蹴飛ばした。
「うぐっ!?」
「こうやるんだよ!」
「かはっ!はぁ・・・てめぇ何すんだ!」
「命を救ってやったんだ。感謝しろ。」
「だからってこんなやり方あるかよ!」
遥のもとへ駆け寄る。
意識がない。
「幻覚だよ。」
「は?」
「今のそいつは、幻覚を見ている。それから幻聴も。あの薬の効果だ。素晴らしい。成功だ。」
成功だと?
これが?
「・・・治せ・・・」
「無理だよ。これからこいつがどう壊れていくか見物だ。」
「ふざけんな!コイツは無関係だろ?!ただ、Ωとして不自由な世界でも努力して生きていただけだろ!?」
「・・・Ωだから俺らの奴隷なんだよ。」
・・・奴隷?
Ωだから?
そんなのめちゃくちゃだ!
「・・・許さねぇ・・・絶対許さねぇ!」
猪田に殴りかかろうと飛びかかった。
だが、それも周りに止められる。
「無力だな。」
そう言って、俺を嘲笑う。
殺してやる・・・遥をこんな風にしちまった事後悔させてやる!
「その目気に食わねぇな。」
「うぐっ!?」
腹に鈍い痛みが走る。
何度も何度も殴られた。
「うえぇ!」
その勢いで胃液が上がってきた。
「・・・弱い者は可哀想だな。ただ見ていることしか出来ない。」
猪田が遥に近づく。
「遥に何する気だ!」
「何もしねぇよ。・・・これじゃあ、赤ん坊はもうダメだな(笑)」
「っ!?」
「・・・無様だ。ヤクザなんかと子供を作るからだ。」
無様なんかじゃない。
遥も・・・Ωなりに一生懸命生きてるんだ。
コイツなんかに・・・何がわかる・・・
「楽しみにしているよ・・・Ωちゃん。」