第10章 愛しているから
遥side
気が付くと裸のまま倒れていた。
体中には大量の白い液体がかかっている。
腰もズキズキと鈍い痛みが走る。
「お・・・水・・・どこ・・・」
辺りを見渡すと少し離れたところにペットボトルが転がっていた。
あれだ。
「ん・・・いっ!?」
立とうと力を入れた瞬間激しい痛みが全身に響いた。
「・・・諦めちゃ・・・駄目だ・・・拓真に・・・拓真に飲ませないと・・・」
痛みに耐えながらペットボトルを拾った。
拓真はぐったりとしている。
大丈夫、生きてる。
息はしてる。
そう自分に言い聞かせながら拓真の元に近づいた。
「拓真っ・・・これ・・・飲んで・・・」
「・・・は・・・る?・・・」
拓真の声を聞いて安心してしまった。
力が抜け、その場に座り込んでしまった。
「口、開けて?」
拓真の頭を支えようと手を差し伸べる。
パシッ!
室内に高く短い音が響き、手が振り払われる。
「っ!拓真?」
「近づかないで・・・くれ・・・」
「何言って!」
「そこまでして欲しくねぇんだよっ・・・もっと・・・自分の身体・・・大事にしろよ!・・・赤ん坊・・・居るんだろ?」
「っ!」
「それに前に、俺の事は忘れるって言ったのはお前の方だ。もう・・・疲れた・・・お前の苦しむ声も・・・姿も・・・見たくねぇ!」
拓真は僕の顔を見ようとしない。
ずっと下を見つめて、力を振り絞って叫んでいる。
その言葉に偽りは一切無い。
僕には分かる。
「ごめん・・・ね・・・ごめんね、拓真。」
「もういい・・・俺には構わないでくれ・・・」
「そんな・・・無理だよ・・・」
もう一度手を伸ばす。
「触るな!・・・来ないでくれっ・・・その汚ぇ体で・・・近づかないでくれっ!」
「っ!たく・・・ま・・・」
そうだよね・・・僕の身体汚いよね。
色んな人に犯されて・・・
ごめんね。
けど、拓真のその言葉は震えていた。
涙を流しながら叫んでいた。
きっと最後の言葉は・・・本音じゃない。
そんな事は分かっている。
ただ、拓真からそんなこと言われたのは初めてで僕の目から流れる涙は止まることは無かった。