第9章 信じるべきは・・・
遥side
「ここだ。」
途中、誰にも会わず武器庫まで来れた。
「待て、遥。」
「「っ!」」
後ろから声をかけられた。
「遥下がってろ!」
拓真が僕のナイフを構え僕の前に立つ。
相手は中原さんだ。
「中原さん・・・どうして騙したんですか・・・」
「・・・俺だって・・・こんな事はしたくない。けど仕方が無いんだ。」
「どういうことですか?」
「遥、知り合いか?」
「うん。遼君の所にいた人だよ。」
「何でそんな人がここに・・・」
拓真も驚いている。
僕にもわからない。
仕方がない?
「・・・『好きだ』って言ってくれたのも嘘だったんですか?」
「違う!それは本当だ!」
「じゃあなんでこんな事!」
「俺は・・・俺だって大切な人を守る為なんだ。けど・・・やっぱりお前も守りたい。だからっ!」
中原さんは俯いていた顔を上げ、僕を真っ直ぐ見つめた。
「ここからお前を出したい!今すぐここから出るんだ!その扉を開けたら警報がなる。そうなったらもうここからは逃げられない。あっという間に囲まれて終わりだ。」
「・・・でも武器が無いと・・・」
「今は見張りが少ない。・・・いつあの人が帰ってくるかは分からないが、居ないうちに逃げるんだ。寄り道をしてる暇なんてない。」
「そんなの・・・今更信じろと?1度騙しておいて?」
「お前の気持ちは分かる。だが頼む。これだけは信じてくれ。」
僕にはもう何も信じられなくなっていた。
この人の言葉をどこまで信じたらいい?
普通は疑わないといけない。
遼君だってそうするはず。
拓真は?
拓真ならどうする?
普通の生活からこんな状況にいきなり置かれて、人を信じれる?
「遥、信じてくれ。この時間も無駄にしたくない。一刻も早くここを出ないと。」
「・・・拓真・・・」
「・・・正直、俺にはこの人が信じられない。会ったばかりだからな。けど、お前はどうなんだ?」
「僕は・・・今はこの人の言葉を信じるべきだと思う。確かにこの建物の中は全く人がいない。警報がなればどこからでも囲まれる。もちろん・・・ここの親分の人も直ぐに駆けつけると思う。でもね、あなたのことはまだ確実には信じられないです。」
僕は拓真の手を引いて逆方向に走った。
「遥!?」
「あの人も一応敵だ。今は逃げないと。もっと敵が集まる前に。」