第9章 信じるべきは・・・
遥side
「ん・・・遥?」
「拓真・・・」
僕の膝の上で眠っていた拓真が目を覚ました。
きっと、今までゆっくり眠れなかったんだろう。
かなり長い時間眠っていた。
身体だってボロボロだ。
「・・・子供出来たのか?」
「うん。妊娠したんだ。遼君との子供。」
「そうか・・・」
拓真が起き上がろうと地面に腕を付いた。
「駄目だよ。まだ寝てなきゃ。傷も酷いし。」
「腹に赤ちゃん居るんだろ?こんな事してる場合じゃねぇよ。」
「でもその傷じゃ動けないよ。じっとしてなきゃ。」
無理矢理拓真を寝かせ傷を詳しく見ていく。
身体中が痣だらけで頭からも血が出ている。
「こんなになるまで・・・ごめんね。」
「俺は平気だ。」
ここには治療できるようなものが無い。
せめて包帯だけでも欲しい。
「・・・遥、ここから出よう。」
「む、無理だよ!見張りだって何人居るか分からないし、ここが何処かも分からないのに。」
「大丈夫だ。ここの地図は何となく覚えてる。俺もされるがままじゃ嫌だからな。」
「どうやってここの地図が分かったの?」
「廊下の壁に貼ってあるのを覚えた。」
凄い・・・
ちゃんと考えてたんだ。
僕とは違って諦めてなかったんだ。
「な?逃げよう。大丈夫だ、俺が付いてる。ちゃんと遼さんの元へ送り届けてやるから。」
「嬉しいけど・・・また拓真に何かあったら・・・」
「お腹の子。俺にも見せてくれよ。」
拓真の優しい笑顔とその言葉に胸が熱くなった。
そうだ。
この子は守らないと。
ここに居たらこの子は確実に助からない。
「・・・うん・・・わかった!」
僕だって、遼君の力がなくても守れる。
戦える。