第9章 信じるべきは・・・
遼side
遥が連れ去られた。
その時俺は何をしていた?
この傷で動けず、押さえつけられてただ叫ぶしか俺にはできなかった。
大切な人1人守れなかった。
いや2人だ。
こんな俺が家族を持つなんて。
やっぱり無茶だったんだ。
それでも・・・
それでも俺は・・・
『遼君。』
大切な人が・・・
『大好きだったよ。』
大好きな人が・・・
笑ってそう言ってくれたから・・・
あの笑顔を隣で守り続けると誓ったから・・・
諦める訳には行かねぇんだ!
「うっ!クッソォォ!動けぇぇ!」
足の傷なんてどうでもいい。
こんなものあの瞬間の悔しさに比べれば・・・
「遥、待ってろ。今行くからな。」
壁に身体を預けながら外まで動く。
正直、足の痛みは酷い。
いつか読んだ『人魚姫』という本に出てきた『硝子の破片が散らばる上を歩いている様な痛みが』という表現が身に染みて分かる。
1歩踏み出すのが怖いほどに痛みが走る。
けど、そんな事言ってられない。
「親分!!」
「っ!須賀野っ・・・やっと来たか・・・車を出してくれ。今すぐにだ。」
須賀野が身体を支えてくれる。
「・・・遥さん連れていかれたのですね。」
「あぁ。だから早く・・・」
「お気持ちは分かります。ですがその足では無理です。まずは治療を・・・」
「時間がねぇんだよ!急がねぇと・・・遥が・・・」
「駄目です!その状態で行ったとしてもまた守れずに同じことの繰り返しです!」
「こんな怪我どうってことねぇよ!いいから早くっ!」
「・・・お許しください。」
「ぐっ!?」
腹に鈍い痛み。
その後目の前が真っ暗になった。