第9章 信じるべきは・・・
遼side
遥の身体が心配だ。
ここに来てから、少しずつ弱っている気がする。
妊娠するとあれが普通なのか?
あまりにも帰ってくるのが遅く、洗面所に様子見に行くことにした。
「遥・・・何してるんだ?」
「・・・っ・・・ごめん・・・なさい・・・」
「は・・・る?」
頭を抱えひたすら何かに謝っていた。
「僕はΩだから・・・出来損ないだから・・・君を守れなかった・・・」
誰と話してるんだ?
周りを見ても誰もいない。
遥1人だけだ。
「遥。落ち着け。」
「遼君っ・・・あれ・・・僕何を・・・」
「・・・何かあったのか?守れなかったって何だ?」
「あ・・・」
遥は俯き、胸に手を当て間を置き話し始めた。
「その・・・夢に・・・出てきて。」
「何が?」
「・・・血を流してる遼君。それから・・・見知らぬ男の子。僕何かに追いかけられていて、捕まっちゃうんだ。そして、ナイフでお腹を・・・」
遥はかなり精神的に疲れているようだ。
「遼君に助けを呼ぶけど、ピクリとも動かなくて・・・目の前には男の子が・・・立っていて・・・泣きながら僕に訴えてくるんだ。『守ってくれるんじゃなかったの?』って。立ち去っていくんだ。」
「その子はお腹の子なのか?」
「分かんない・・・けど・・・僕を『おかあさん』って。」
「そうか・・・」
遥がさらに落ち込みお腹に手を当てる。
「・・・大丈夫だ。今こうやって俺に夢の話をした。だから、それが正夢になることはない。」
「え?」
「聞いた事ねぇか?誰かに話すと正夢にならないって話。」
「・・・ある。」
「だろ?だから心配はいらない。それに、何かあっても守ってみせるからな。」
「・・・ありがとう。遼君。」
「・・・子供の為にも、しっかり寝ないとな。戻るぞ。」