第8章 Shall we dance、LittleLady
『どうせアタシと婚約したいのはお飾り貴族の半端者だろうし、それを除外する為の無茶な作戦だから。ただこの場を踊りきれば魔法騎士としての実力を示せるハズ』
姉上が仰ってた通りだ。
『さて…妾をリードしてくれる一番手は誰かしら?』
「私と踊って頂けませんか?お姫様」
『!』
そう跪きながら手を差し伸べると一瞬だけ豆鉄砲を喰らった様な顔をしたが、すぐ笑みを浮べてシルクの様な肌をした手が置かれた。
※※※
流れる音楽に合わせて優雅に軽やかに踊る姉君はアレだけ嫌がってたとは思えないくらい楽しそうで一緒に踊ってる野郎共がとても妬ましく思える。だけどあの重力の中で小柄とは言え、女性をリードしながら一曲を踊り終えるのはとてもしんどいのが分かるから今踊ってる連中は今でも有望だし、まさしく将来も有望なのだろう。
「あの中の誰かと姫さんは結婚すんのかねぇ…」
「さぁな」
「不貞腐れんなって」
「不貞腐れてねぇし!俺だってあれくらい出来るし!」
「出来ても姉弟じゃ結婚出来ねぇじゃん?」
そんなの知ってるっつぅの。それが出来たらこんなに切なく無い。苦しくない。
「どうして姉君が姉君なんだろう…」
「何でだろうな…人生って上手く行かねぇよな」
何て思い耽ってるウチに最後の曲。フエゴから始まってパスしてパスしてウィリアムに回ってパスしてパスして最後はノゼル。
「すげぇよな姫さん」
「?」
「俺ダンスの事は全く知らねぇけど…あの重力の中、一人だけ休み無く踊って相手によって立ち回りもステップも変えてる」
まぁ…確かに。身長差が大きいフエゴと身長差が変わらないウィリアムとじゃ全然ダンスも変わってくる。その辺ノゼルとは踊りやすそうにしてるな………妬ましい。
-ジャン…-
と曲が終わると拍手喝采。姉君は若干額に汗を滲ませながらドレスの裾を持ち上げて皆に深々と頭を下げる。顔を上げて一息付くとパチンと指を鳴らして氷の彫刻を消し去って重力魔法を解除。まるで空でも飛べるんじゃないかってくらい身体が軽くなる。
『この中で一曲踊り切った殿方の皆様、大変素晴らしいです。望むのであれば貴方方の婚約の契ならばお受け致しましょう』
-ザワッ-
『ですが複数いらっしゃった場合は………』