第8章 Shall we dance、LittleLady
「そうすればヴァーミリオン家もシャネル家も安泰だ」
その言葉に喉が熱くなるけど、グッと堪える。
『そこはフエゴの意思もかかってきますから』
「何ならレオポルドでも良いぞ」
『それはちょっと年の差問題がですね…』
流石に10個も上の人と婚約なんてレオ君が可哀想過ぎる。男性が10個上と女性が10個上はだいぶ意味合いが変わってくるし。そこは恋愛経験のないアタシですら流石に分かる。
※※※
「チェリーさまだー!」
「ほんとだー!」
-きゃっきゃっ-
お色直しから戻って来た姉君は婚約者となるかも知れない誰かとコミュニケーションを取る訳でも無く、ふらりと庭にやって来て子供達と戯れる。
「お聞きしましたわ!兄様と踊られたって!ご婚約なさりますの?」
『え?うーん…』
「おれとおどったらおれともこんやくしてくれるんですか?」
「馬鹿ね。ソリドじゃチェリー様のお相手には不充分よ!」
『ははは………!ノエルちゃんおいで』
「!」
『髪の毛が乱れてる』
「あ…ありがとうございます…」
「「…」」
あぁ見えて姉君は子供達に絶大な人気を誇っている。産まれてから15年間、魔導書を貰うまで誰の目にも触れなかったし、社会に出たら出たで忙しいからそんなに面識がある訳では無いはずなのだが子供の心を掴むのが上手い。
「チェリーさま、ごきげんよう」
「ほんじつもうつくしいです、チェリーさま」
『ミモザちゃんごきげんよう。キルシュ君もキラキラしてるね!』
-がばっ-
『ぅおっ!?』
「あそんでください!チェリーさま!」
『レオ君は元気だねぇ…いいよ、何して遊ぼうか』
-きゃっきゃっ-
しがらみも何も無い家に産まれてたら姉君もああやっていつも笑ってられたんだろうなって思う。下民からすると俺達王族や貴族の裕福な暮らしが羨ましいとは聞くけど裕福だからといって必ずしも幸せな訳では無い。
「姉君の幸せって何だろう…」
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