第8章 Shall we dance、LittleLady
この夜会は子供も出席してる為、この様な場を設けている。この庭はメインイベントに関係の無い子供達の為のスペース。
そして噴水前の階段を登ると煌びやかな屋敷が聳え立つ。
「本日はお越し頂き誠に有難う御座います」
二階のテラスから顔を出した親父が声を上げる。隣で静かに控えてるお袋は少し顔色が悪い。
「本日の夜会の目的は三つ。一つは多少時間が経過してしまいましたが我が娘、チェリーが灰色の幻鹿団の副団長に就任した祝い。二つ目はより一層結束を強める事を目的とした親睦会」
取って付けた様な目的をスラスラと説明する。しかし…姉君の姿が見当たらない。
「三つ目はシャネル家の時期当主となるチェリーの婚約者を決めようと思っております」
-ザワッ-
「貴様が当主ではないのか?」
「俺?いやいやいや、俺は無理」
どの家系も跡継ぎは普通は男子。だがシャネル家は生粋の女系。男が産まれても基本的に優秀なのは女。所謂このご時世には珍しい女尊男卑な家系なのだ。世界各国に散らばってる我が一族の大半の当主は女。男は大層肩身が狭いらしい。らしいってのはぶっちゃけ俺は親戚を知らないのであくまで親父の話。
※※※
「えらく賑やかだなー流石、お貴族様の夜会は違うな」
と部屋の扉の外から呑気な声がする。お節介なシェリーが何かあったらって心配してヤミを護衛に回してきた。
「つーかもう夜会始まってんだろ?行かなくていいの?何をそんなに色付けてんのか知らねぇけど時間かかり過ぎじゃね?」
-バァン-
「!?」
『こっちも好きでやってる訳じゃないっての』
「………」
『何よ』
「化けるなぁって」
『それが女よ』
※※※
「我が娘、チェリーとの婚約を申し出る者は踊り場へ」
そう言われて屋敷に踏み入れると眩いくらいの装飾されたエントランス。優秀なコックが作った料理がずらりと並べられて執事やメイドがいい酒を注いで回る。金色のポールに囲まれた中央のスペース。そして二階へ続く階段の中間地点の広間の高級な椅子に座るのは、この日の為に飾られたであろうチェリー。
一同「………」
-すぅ…-
一同「!?」
お淑やかに座ってたかと思うと肘置きに肘を付く。