第8章 Shall we dance、LittleLady
『理由はー…』
-コンコン-
-ガチャ-
「姉君起きてる?」
『何?シェリー』
「あ…いや………大丈夫かなって…」
もごもごと口篭るシェリーは気まずそうに目を伏せる。
『別に。父上が横暴なのは今に始まった事じゃ無いでしょ?』
「そうなんだけど…婚約者とか結婚とか考えた事無い世界だし」
そもそもお付き合いなんてものもした事ないのにイキナリ婚約者とか結婚だもんなぁ。いまいちピンと来ないし異性を好きになった事も無いアタシが好きでもない人と結婚は少し…いや、かなり嫌だ。
だけど嫌だと言ったところで聞き入れてもらえないのも分かってるから精一杯の反発はさせてもらう。
『問題無いよ』
「え」
『手荒いけど策は既に考えてある』
「策って…婚約者を決める夜会は三日後だぞ!?人員は!?」
『必要無い。アタシ一人で出来る策』
「何する気なんだよ…」
『秘密』
※※※
翌日。シャネル家が夜会を開くと言う噂は瞬く間に王貴界に広がった。王族や貴族に招待状が送られ特にチェリーの婚約者を決める等とは記載されてなかったものの、多くの人々は俺や姉君の婚約者を決めるパーティでは無いかと噂をしていた。
間違っては無い。寧ろ大正解。だけどそんな事一言も記載してないのに何故確信を突く様な想像が出来るのか不思議だ。
「え?何?お前結婚すんの?」
「いや、俺は姉君一筋だし」
「シスコンキモいんですけどー」
「うるせぇ!」
ヤミに茶化されながら書類の仕事を片付ける。本来ならば書類の仕事は姉君なんだけど、生憎その夜会の準備で数日は欠勤。だから代わりに俺がやってる訳だが。
「こんなんでいいのかな?」
「いや、駄目だろ。字ぃ汚いし色々間違ってる」
「えっ!?」
「僕がやるよ」
「「!」」
後ろから聞こえてきた声に振り向くと多分にこやかに微笑むウィリアムが居て。仮面被ってるから果たして本当に微笑んでるのかは分からない。本当に分かりにくい新人だ。
「まぁシェリーがやるよりは妥当だな」
「ぐぬぬ…」
ヤミの言う事は一理ある。俺は書類とかインドアな仕事は全く出来ないと言ってもいい。対してウィリアムは容量も良いし副団長と言う立場の姉君の側近的な役割をしてるから内容とかも把握してるだろう。