第7章 In the fog、LittleLady
少し力を力を入れ過ぎてしまったのか、じんじんと頬が痺れるけど目は醒めた。木の枝に掛けてたタオルで身体を素早く拭いて(寒いから。氷使いでも寒いものは寒い)衣装を着て防寒用のローブを羽織った時だった。
-くらっ-
『っ…』
頭痛と視界が歪む目眩に吐気を覚えて片膝を付く。ヤバい。コレは寝不足と逆上せのダブルラリアット…だ…
※※※
すっかり長風呂してしまったが、とても良いリラックス効果を得られた。夜勤明けの朝風呂ほど贅沢なものは無い………と思いながら着替えを済ませていたらドサッと少し離れたところで物音がした。
獣だろうか?この氷山は確かに獣は多いが基本的には極寒の地で無いと生きられない獣しか居ない。ここ山頂も気温はかなり低くはあるが晴れているし湯の影響で暖かいから獣は山頂まで登れない。
-ザッ…-
「!?」
-グルルルル…-
「けも………じゃないな。フェンリルか」
体長160cmはあるだろう、大きな白狼。
"主が倒れた。どうすればいい?"
「主?チェリーの事か?」
と背に乗せているのはチェリー。蒼白い顔。不自然に蒸気した頬。
「案ずるな逆上せたのだろう」
"体調も宜しくないのに長湯などなさるから…"
「体調不良だったのか?」
"ここ数日寝ておられない"
寝不足…か。副団長に就任してから忙しそうだとは聞いていたから無理をしていたのだろう。
「少し寝かせた方がいいだろう。湯冷めしないように暖かくして………」
"どうしたらいい?"
「………」
※※※
夢を見た。ある女の子が死ぬ夢。その子は何か特別な力があって色んな人から狙われて身内からも狙われるの。でもその子には大切なモノが多過ぎて争いを見るのが辛くて…最終的には自らの胸に冷たい剣を刺し立てて死んでしまうの。
だけどその子はとても幸せそうだった。だって沢山の人々に愛されていたから。
『………ん』
もしアタシが夢の中の女の子なら、なんて微睡みの中で考えてたら次第に映像が遠ざかって真っ白になる。
-パチッ-
『あ、れ…』
重たい瞼をゆっくりと開けると先ず目に入ったのはパチパチと音を立てる暖かい炎。鼻腔に残る硫黄の匂い。