第7章 In the fog、LittleLady
そんな思い出話をしながら数々のケモノを倒して登って行くといつの間にか山頂へ辿り着く。山頂はマナこそ暴れまくってて湯煙は濃いものの天気は嘘みたいに快晴で暖かい。それでも雪は解けない不思議。
『…とまぁそれじゃ………』
-ポポポーイ-
と服を脱ぎ捨てて湯船に脚を浸けたところで気付く。この誰も来られない様な秘湯に先客が居る事に。
『………』
見覚えのあるオレンジ色の髪の毛にテンションが急激に高くなる。
『メレオさんっ!』
-ガバッ-
「!?」
『先程は有難う御座います!メレオさんもこの秘湯にいらしてたんですね!』
と抱き着いてみるが何か違和感がある。何て言うかこう………全体的に硬すぎる………し、こんなに背中って言うか肩幅広かったっけ?
『………メレ…?』
その違和感に抱き着いた腕の力を緩めると、くるりと此方を向く。
『メ、レ………』
「………チェリー!?」
『え?あ、れ………?ふ、えご………?』
水も滴る良い女では無く水も滴る良い男がそこに居た。
※※※
『え!嘘!ヤダ間違えちゃった….御免なさい…』
パッと腕を離すと恥ずかしそうに顔を逸らしながらゆっくりと後ろに下がって距離を取る。どうやら私は姉上と間違えられたらしい。そしてチェリーは姉上の前だとこんなにも無邪気でスキンシップが大胆なのか。
『えー…と………フエゴはどうして此処に?』
「夜勤上がりの休暇だ」
『そ、そっか…』
そう言いながらじわじわと距離を空けるチェリーはやがて濃い湯煙にぼやけて行く。
「先程はどうとか言っていたが姉上と会ったのか?」
恐らく明朝の事だろう。少し発破をかけてみる事にした。
『うん。明け方に気分転換で散歩してる時に偶然。すぐ行っちゃったけど』
引っ掛かりはしない、か。
『でも此処にフエゴがいるのは凄く吃驚した』
「一度姉上に修行がてら連れてきてもらったことがある。それ以降はたまに利用させてもらっている」
『そうなんだ…実はアタシも。此処に来たのは二回目だけど』
微笑する様な柔らかい声が響く。姉上の導き、か。
『んでもってポチと出会った場所でもある』
「ポチ?」
と聞き返すと冷たい風が吹き抜ける。