第7章 In the fog、LittleLady
「チェリー副団長、少しお休みになられては如何です?ここ数日寝ずに働きっぱなしですし」
『…そうね、そうさせてもらおうかな』
アジトで寝ても後々団員が来て騒がしくなって眠れないだろうし、シェリーの様子からして家に帰るのは望ましく無い…となると別の場所か。別の場所でゆっくり出来る所と言えば。
『秘湯にでも行ってくる』
「「秘湯?」」
『強魔地帯にある…』
「待て待て待て」
『?』
「行くまでが大変だろ。寝不足で強魔地帯は…流石の姉君でも危ねぇんじゃねぇか?」
『ポチ居るから大丈夫』
「「ポチ?」」
『氷の精霊さん』
「あぁ…あの狼…って、え………ポチ?」
「面白いネーミングセンスですね」
だって初めて会った時は仔犬だったんだもん。
※※※
-ヒュオォォオオォ-
とまぁ場所は変わって強魔地帯デンカン氷山。荒れ狂うマナと吹雪で最悪の視界。一般人なら一瞬で体温を奪われ即死。しかしこの氷山の山頂にはとても素敵な秘湯がある。雪景色の中にある緑の木々はとても神秘的なのだ。此処は旅をしてる時にメレオさんと一度来た事がある。メレオさんは何度か来た事あるみたいだったけど。あの方温泉好きだし。
あ、勿論アタシも温泉は好き。その後の牛乳とか本当にもう大好物。そして此処は…
『君と初めてあった場所』
そう言うと喉を鳴らしながらポチが擦り寄って来る。
あの時は山頂に到達する前に魔宮があって宝物庫には金銀財宝が無くて落胆したけど、この子に出会えた。この子が宿った瞬間に魔宮は粉雪の様に消えてしまったけど、宝物庫なのに獣の山で吃驚したっけ。
『しかもメレオさんは魔宮に入れなかったし』
"私が選んだ人間しか入れない様にしていた"
当時のアタシは魔宮なんて一回しか入った事無かったし、その時に受けた呪詛で多少トラウマもあったし一人で入るの初めてだし今程強くも無かったし。そのくせフェンリルを屈服させるか自分が死ぬかのどちらかになるまでは魔宮から出られないって言うし姿形は仔犬なのに精霊だからとてつもなく強いし。
『あんな瀕死になったの初めてだったよ』
"その節は申し訳ないと思ってます主。ですから今はこうして主に忠誠を誓ってます"
『うん、アタシを選んでくれて有難う』