第7章 In the fog、LittleLady
「静かにしろ莫迦者」
(何故この様なところに!?家には戻られるのですか?)
「戻らん。たまたまだ」
と声を潜めて初老の女性の姿が深い森に消えて行く様を悲しそうな表情で見送るチェリーを見つめる。
「早く帰れ」
(しかし…!)
『誰?』
「「!?」」
ふと殺気が向けられる。
「今聞いた話は他言するな。分かったか?」
(はい)
-ザッ-
「私だ」
『!?メレオさん!?』
気になる事、聞きたい事は沢山あるのだがここは姉上が仰る通りこの場を速やかに離れる事にした。
※※※
『メレオさん!どうして此処に?』
先程までの悲しい顔や刺さるような殺気は何処へやら。花が咲く様な笑顔で駆け寄ってくるから頭を撫でてやる。
「あの方が此方へ伺うと聞いてな」
『そうですか…』
「辛くは無いか?」
『何がですか?』
「いや………少し背が伸びたか」
『同じ事言われました』
恥ずかしそうにはにかむ姿があの方と良く似ている。
「私はもう行く」
『え!?もう!?王都に戻られないんですか?』
「あそこは堅苦しい。性に合わん」
『そうですか…』
「あの方がちゃんと自国に戻るまで見届ける」
『…有難う御座います』
「無理はするなよ」
『はい!メレオさんも!』
元気に返事をするチェリーの頭をもうひと撫でして背を向ける。
『もう一人居た様な気がしたけど気の所為だったかな?』
※※※
「心配しただろバカ姉ぇえええ!!!」
キィーンと鼓膜が破れそうな…睡眠不足には相当のダメージが残る大声に耳を塞ぐ。
『朝っぱらから煩い…静かにして』
「一体こんな朝早くに何処ほっつき歩いてるんだよ!」
『はぁん?息抜きに散歩して何が悪いの!?』
うん。散歩。嘘は吐いてない。深い森の朝霧がかかってる湖畔…最高に癒しだった。ってゆーかシェリーがこんな朝早くに団に来てるのは相当珍しい。恐らく家の中がピリピリしてて居心地が悪かったんだろう。
「そんな時はこう…メモを残すとかだな!?」
『子供じゃないんだから』
「まぁお二人共その辺で」
と姉弟の喧嘩を仲裁しに入ったのはウィリアム。まだ寝てる方もいらっしゃいますから、と間に割り込む。