第6章 Dancing on ice、LittleLady
俺とヤミの間を裂く様に突如として背後から伸びてきた白くて細い腕。
"重力魔法…"
歪んだ空間から出てきたのは間違い無く姉君で。
『女帝の御前』
-ズゥウゥゥン-
と身体中がビリビリする魔力。まるで何かに伸し掛られた様な重み。空を飛行していた敵襲が一気に地に落ちて行く。
「格好良い登場の仕方だねー副団長さーん。でもこの重力って地味に俺達にも効いてるんですけどー」
『基本的にアタシを見下げる位置に居る人とか背の高い人には効く。でも立ってられるなんて流石だね』
と感心した様に言う姉君の頭をヤミが掴む。
「どうにかならねぇの?これじゃ俺達マトモに動けないんだけど?」
『ならない。鍛錬の一貫だと思って』
パッと腕を払い除けると続く様に歪んだ空間から現れたのはウィリアムで、此奴は姉君と身長変わらないから平気そうだった。
『この魔法はまだ慣れてないし不安定だから、そのウチこの状態に慣れる。魔力の高い人はそろそろ起き上がって動ける頃だろうね…飛べはしないけど』
「あっそ。無茶苦茶な姫さんだな」
『アタシとシェリー。ヤミとウィリアム。二手に別れて敵の討伐。他の皆は国境に結界を。万一突破されたら侵入を許す事になる』
一同「はいっ!」
『じゃあここはアタシの得意なフィールドにさせてもらうわ』
そう言うと魔導書の頁をパラパラと捲る。
『氷創成魔法"氷の世界(アイスワールド)"』
広範囲が氷地になった。
※※※
『さて…シェリー』
「わーってるよ!姉君を失望させたりしない」
自信満々に胸を張りながら言って退けるシェリーを見て安堵の笑みが溢れる。普段の振る舞いはお子様のままだけど…一年見ない間に少しだけ大人になったみたい。
「姉君の今日の気分は?」
『少し身体を動かしたいかな』
ここ最近ずっと書類仕事ばかりで身体が鈍ってる気がする。
「奇遇だな、俺も。雷創成魔法"ミョルニルの魔槌"」
『氷創成魔法"カラドボルグの妖剣"』
「いいねぇ…女帝が持つに相応しい美しい剣だ」
『その槌はシェリーには少し似合わないね』
「今度手合わせでもしてみる?」
なんて悪戯っ子の様に笑う弟の顔面を踏み台にする。
「ぶへっ!?」
『調子に乗るな』