第5章 Welcome back、LittleLady
「あー、また困らせてる」
「何をしてるのだ、あやつは」
「やっぱ暇みたいでさ。あーやってメイドと戯れてんの」
まるで子供の様だ、と思った。
しかし先日の式の参加者曰く、たった一年でとても大人になっていたと言っていた。生憎、先日の式に参加してない私達はそれを知らない。後日の任務の資料をチェリーから貰い受ける為にシャネル邸へ参った訳だが。
「姉君ー?おーい、姉君ー?」
一際大きな扉。部屋の広さもかなりのものだろう。しかし呼んでも返事は無い。
「え?さっきメイドに怒られてたよな?部屋からも殆ど出ないし…中に居るハズなんだけどな…入るぞー?」
扉のノブを回すとギィ…と貫禄のある音が響く。
「きゃぁああ!!お待ち下さいシェリー様!!今チェリー様は…!」
「え?」
時既に遅し。と言う言葉が当て嵌るのだろうか。走って来るメイドに気を取られ体制を崩すと勢い良く扉が開く。室内は少し気温が低いのか冷たい空気が流れてくる。その空気と一緒に流れて来るのは甘い香り。
※※※
『もー遅いよ。早く着替………えっ?』
「「「………」」」
バスタオル一枚でベットの上に横になっていた彼女が起き上がると髪を纏める為に頭に巻いていたタオルがズレ落ち湿り気のある髪の毛も落ちる。はらり、とお決まりの様にバスタオルも落ちる。
生まれたままの姿のチェリーと目が合う。頭に浮かんだ文字は"死"。
『…あれ?サキは?着替えが無かったから着替え頼んだんだけど…』
「な…おまっ…、なんてかっこ…!」
『は?何言ってるか分からない。なんの用事?』
「いやっ…だか、ら…書類、を…」
『あぁ…任務の書類ね』
"死"という連想は呆気なく壊され、チェリーは特に気にする様子も無く生まれたままの姿で書類の山になってる机を漁り出す。伸びた髪の毛。とても伸びた身長。キュッと締まった腰は実ったラインを強調させる。
「チェリー様、お召し物を…」
『そこ、置いておいて』
「!?ですが…」
『良いから良いから』
「かしこまりました」
見向きもせずにメイドを追い出す。何処に目をやったらいいのか分からず視線を泳がせても辿り着く先はチェリー。白い背中がやけに毒々しく思えた。