第5章 Welcome back、LittleLady
「治ったらすぐ戻るって言ってたじゃねぇか」
あまりにも直ぐ治ったし、だからと言って直ぐ帰ったら味気無いじゃない?どうせなら色んなところ見たいしで気付いたら一年経ってたって話。
「だとしても魔宮攻略とか友好関係にある王国を助けたりとか敵国への侵入とか何危ない事してんの!?」
『………何?アタシに説教でもするの?』
「あ…いや………ただ心配で…便りも全くくれなかったし…でも団長には定期的に便り出てたみたいだし」
姉離れ出来ない弟。姉として見れば可愛いけど…シャネル家たる者、それじゃ駄目なのよ。しっかり自立してもらわなきゃ。おかしいな…双子なのにアタシってば歳上のお姉ちゃんみたい。
『そりゃそうでしょ。だってアタシは部下だもん。ちゃんと上に報告するのは義務だわ』
「俺は家族なんだけど…」
『弟に心配される程落ちぶれちゃいないわ』
ガタンと席を立って出入口に向かうと後ろから声がかかる。
「何処に行くんだよ」
『父上と母上のところ。まぁ多分今日の事は知ってるだろうけど帰宅の挨拶してないから』
-バタン-
「おいおいおいおい…監禁されかねないぞ…」
「監禁…?」
「あ、いや…何でも無いです」
※※※
「お前は我が一族が頂点に君臨する為の重責を担っているのだぞ!勝手な行動は慎め!!」
「アナタやめて!この子は歳頃の女の子なのよ!?少しくらい好きにさせてあげてもいいじゃない!」
「当主のお前がそんな事だから我々は分家に成り下がったのだろう!?」
「………っ」
「憎たらしいくらいアイツに似やがって…」
部屋を出て遠ざかる父上の足音を確認して手足に繋がれた鎖を壊す。
「チェリー…貴女…」
『逃げようと思えばいつでも逃げれるしやり返そうと思えばいつでもやり返せる。でもそうしないのは…』
「分かってる。私の為よね…御免ねチェリー」
『………』
※※※
「「謹慎中…?」」
「そ。一年間何の連絡も寄越さずふらふらしてた姉君に腹立ててさ…今姉君が出来るのは書類仕事を自室でやるだけ」
屋敷と屋敷を繋ぐ通路から見える庭にある大きな噴水が水しぶきをあげる。かと思えば急に凍り付いてメイドが大きな声で"チェリー様!"と屋敷に向かって叫ぶ様が見える。